エスプレッソマシンを買おうとしていて、初心者には理解しづらい用語がたくさん出てくることがあります。自分にとってどのマシンが最適なのか分からなくて戸惑うこともあるかもしれませんね。
今回は、エスプレッソマシンの中でも最も重要なパーツとしてのボイラー。
サーモブロック、サーモコイル、サーモジェット、シングルボイラー、
ヒートエクスチェンジャー、ダブルボイラーという6つのタイプについて説明していきます。
エスプレッソを抽出するいは90℃前後、スチームを作るには100℃以上の温度が必要です。
この2つのお湯の温度まで上げる方式がマシンによって異なります。
今回はエスプレッソマシン選びの重要ポイントにもなる
温度を左右する加熱の方式についてわかりやすく解説していきます。
よりリーズナブルなモデルに採用されている方式から順に6種類。
さっそく見ていきましょう。
サーモブロック
家庭用エスプレッソマシンでは最も一般的な仕様です。
加熱された金属ブロックが発熱体で、抽出・スチーム用の水をその中に通して加熱します。
金属ブロックにはさまざまな形状やサイズがあり
ブロック内の温度と流量の変化によって温度を調整しています。
一般的な材料には、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼などがあります。
一部のサーモブロックは、アルミニウムのボディ内に
ステンレス鋼のパイプが入った複合設計を採用しているものもあります。
素早く水を加熱できる反面、一定の水温を保てない場合があります。
そのため温度の一貫性が高いとは言えず、パーツ寿命は短い傾向にあります。
価格を抑えやすい点はメリットです。
業務用品質のサーモブロックが搭載されたモデルもあります。
長所
1、非常に手頃な価格
2、予熱時間が短い
3、エネルギー消費が少ない
4、小さい部品
短所
1、耐久性が他に比べて低い
2、抽出中の温度が安定しにくい
3、スケールが発生しやすい
4、エスプレッソとスチームの同時利用不可
この方式を採用しているマシン
デロンギ ラ スペシャリスタ La Specialista
アスカソ Ascaso Dream DUO Steel
デロンギ デディ、アイコナ ECO310R
ソリス SK1014、SK1170S
スチームが準備できるまでの待ち時間 : 数分
サーモコイル
仕組みはサーモブロックと同じですが、水がコイル内を通ります。
コイルは金属製のチューブで、多くは銅などで作られています。
スチームから抽出の温度調整に時間がかかるものの、総合的な温度の変化は早いと言えます。
水は密閉された管の中を循環するので、水漏れや故障が起こりづらく
パーツの寿命も長い傾向にあります。
ここ数年は技術の進歩もあって価格が下がってきているため
サーモブロックからより優れたサーモコイルを採用するモデルが増えています。
長所
1、サーモブロックり安定した抽出温度
2、サーモブロックより耐久性がある
3、予熱時間が短い
4、小さい部品
短所
1、サーモブロックより高額
2、温度が急激に下がる
3、 スケールが発生しやすい
4、エスプレッソとスチームの同時利用不可
この方式を採用しているマシン
Breville Barista Express、Bambino Plus
スチームが準備できるまでの待ち時間 : 数分
サーモジェット
サーモコイルの形状に似ています。 3 秒で最適な抽出温度に到達するのでサーモコイルに比べて早く抽出可能です。
待つことなく最高のコーヒーを作る準備が完了します。
サーモブロックと比較して、年間エネルギー使用量が最大 32% 削減されます。
長所
1、サーモブロックり安定した抽出温度
2、サーモブロックより耐久性がある
3、予熱時間が短い
短所
1、サーモブロックより高額パーツ
2、温度が急激に下がる
3、 スケールが発生しやすい
4、エスプレッソとスチームの同時利用不可
この方式を採用しているマシン
Breville Barista Touch Impress と the Barista Touch、
the Barista Touch Impress、the Barista Pro
スチームが準備できるまでの待ち時間 : 3秒
シングルボイラー
1つのボイラーを抽出とスチームの両方に使用する方式です。
ボイラー内の同じスペースで同じ発熱体を使用するため
抽出とスチームを同時に行うことはできません。
抽出後のスチームはボイラーの温度上がるまで、
逆にスチーム後の抽出はボイラーの温度が下がるまで待つ必要がありますが、
スチームを先にして温度を下げる方が時間的に短縮できます。
長所
1、抽出中の温度がサーモブロックに比べて安定
2、サーモブロックに比べて耐久性がある
3、サーモブロックに比べて多くの容量が入る
短所
1、サーモブロックに比べて高額
2、サーモブロックに比べて消費エネルギーが高い
この方式を採用しているマシン
Gaggia Classic Pro
Rancilio Silvia
NEW DOMOBAR Jr.ANALOG
ECM Casa V
抽出までの待ち時間 : 10-15分 ボイラーの容量による
ヒートエクスチェンジャー(熱交換)
1つのボイラーを抽出とスチームに使用する方式です。
シングルボイラー方式との違いは、抽出とスチームが
ボイラー内の異なるスペースを使用する点です。
ボイラーは常にスチーム温度に保たれており
抽出用の水はボイラー内のチューブを通して瞬時に加熱します。
ボイラー内の水温を変えるシングルボイラー方式とは異なり
抽出のたびに新鮮な水を使用することができます。
また、抽出とスチームの間に待ち時間がなく
同時に使用することもできます。
経験があれば、過熱水を一定時間フラッシュする(流す)ことで
抽出温度の操作ができるので、そのためにこの方式を選ぶユーザーもいます。
ヒートエクスチェンジボイラーには様々な形状があり
たとえば、Expobarは垂直型、Profitecは水平型を採用しています。
長所
1、エスプレッソとスチームが同時に抽出できる
2、デュアルボイラーよりも安価でサーモブロックより高額部品
3、連続抽出が可能
短所
1、自家焙煎した豆を使って特定の風味を微調整するには限られた選択肢に不満を感じる場合がある
2、PIDがない場合、メーカーがあらかじめ設定した温度に依存することになる
3、ダブルボイラーほどの耐久性がない
4、抽出中の温度変化が大きい場合がある
両方のシステムを比較した熱プロファイルの例
この方式を採用しているマシン
シモネリオスカー2
ロケット社 アパルタメント
La Cimbali Junior Casa DT1
Nuova Simonelli Musica Espresso Machine
Rocket Espresso Milano
Bezzera Mitica Espresso Machine
Quick Mill Andreja Premium Evo Espresso Machine
抽出までの待ち時間 : 20分 ボイラーの容量による
ダブル(デュアル)ボイラー
2つのボイラーを抽出とスチームそれぞれに使用する方式です。
ヒートエクスチェンジと同様に、抽出とスチームが同時できます。
メーカーによって実装方法が異なる場合があり
たとえば、Rocket Espresso R58は2つの独立したボイラーで
Breville Oracle Touchはスチームボイラーで抽出回路内の水を予熱します。
ヒートエクスチェンジ方式とデュアルボイラー方式は
両方とも抽出とスチームを同時にできますが、その違いは抽出の温度です。
迅速な温度調整とまでは言えないものの
デュアルボイラー方式が非常に安定しています。
1日に5杯以上エスプレッソやラテを飲む場合
ダブルボイラーが適しています。
長所
1、抽出時の温度安定性が最も高い
2、連続抽出時、スチームの圧力が低下することなくラテ等を作ることが可能。
3、耐久性が最も高い
4、それぞれのボイラーでの温度調整が可能になるので味の微調整が可能。
短所
1、最も高価な部品
2、大きい部品なので本体の中で場所を取る
この方式を採用しているマシン
Breville Oracle Touch
Rancilio Silvia Pro X
マルゾッコ リネアミニ linea micra
NEW DOMOBAR SUPERELECTRONIC
抽出までの待ち時間 : 20分 (ボイラーの容量による)
以上、代表的な加熱方式を6種類紹介させていただきました。
加熱の仕組み方式を知ることで、温度の一貫性に差が出る理由や
どうしてマシンによって価格に違いがあるのかも見えてくるのではないでしょうか。
安定した温度にはデュアルボイラーが最適と言えますが
必ずしもあなたにとってのベストになるとは限りません。
検討したい価格帯、抽出の頻度、使いたいメニューなど
さまざまな選択肢から自分にあった1台を探してみてください。